鷲大明神が安置された番神堂(ばんじんどう)は、以後「鷲大明神の社」とか、「鷲の宮」と呼ばれるようになったのです。
市の名物には熊手のほか、笹竹に通した「頭の芋」や、「黄金餅」が人気と見え、数々の錦絵に当時の美人とともに登場しています。また一時期、青竹の茶筅に今戸焼の土人形なども土産として存在したようで、随筆と挿し絵が、今に伝わっています。
長國寺の東隣に位置する、その新吉原も市の日に限り、大門以外の門も開放して祭りの賑わいに華を添えました。
また、錦絵などにもたびたび描かれ、広重の描いた江戸のガイドブックとも言える『絵本江戸土産』(第六編)には「浅草酉の町」と題して浅草たんぼから眺めた酉の市が紹介されています。
このように江戸文化の一翼を担った浅草酉の寺・長國寺の酉の市は、江戸時代からの伝統と文化をそのまま今に受け継いで、参詣者に小さな江戸を体現させてくれるのです。